
そう、セレッソの連敗を止め、ワシントンを止め、磐田をほふった270分間無失点記録継続中の「魔女」たろもがスタジアムに来ていたのだ。
ただ今までの3試合の無失点が多分に運の要素を含んでいたのに対し、今日の無失点はチームの実力によるところが大きい。特に藤本、酒本、宮原ら今まで裏方に回っていた選手達の頑張りは観ていて清清しく。頼もしささえ感じた。
布陣は久藤、ファビーニョのところにそれぞれ酒本と藤本。前線に西澤、左サイドにゼ・カルロスが帰ってきた。

試合開始早々、いきなり藤本が固さを見せる。酒本への横パスをミスキックし、危険なゾーンでボールをインターセプトされた。しかしこのプレーで逆に吹っ切れたか、この後の藤本のプレーは落ち着いていたし、随所で粘り強さを披露した。
しかしその藤本に更なる試練。前半途中、競り合いで前田が足首を負傷、サブに本職DFがいないセレッソは藤本を前田の位置に下げ、宮原をボランチとして投入したのだ。

だが意外にも、この交代で流れがセレッソへと変わる。危機意識がチームを結束させたか。前述の藤本と右サイドでコンビを組んだ酒本は、ヴェルディ戦の際の不振がウソのように自慢のドリブルでアウグストを翻弄。老獪なベテランを混乱させた。
宮原は恐れることなく前へ、前へと帆を進める。長短のパスで、ドリブルで、攻撃の基点となる。もちろんその後ろには下村のしっかりとしたバックアップ。
主力選手達の奮起も凄まじい。吉田は何度も有ったピンチを神がかったセービングで防ぐ。ブルーノの熱い魂は炎の壁となって川崎に立ちふさがる。西澤のトラップ、ポストプレーは5センチ以上身長差のあるDF陣の中でも機能した。
そして古橋、森島。高さと強さの有る川崎DFを崩すにはスペースを突くこの二人が欠かせない。
後半早々に生まれた古橋の先制点を呼んだのは、高い位置からの泥臭いチェイシングと素早い攻守の切り替えの賜物であるし、続けざまに奪った森島の2点目はゼ・カルロスがボールを持った時にゴール前に生まれたスペースをしっかり突けたところで勝負有りだった(あの狭いスペースであれだけのプレーが出来るのだから、恐ろしい)。
後はしっかりと守備固め。前線には怪我明けのゼ・カルロスに代えて苔口。さらにバテの出始めた森島に代えて黒部。スペースが出来れば苔口のスピードが生きてくる、黒部もゴールこそなかったが、相手DFが嫌がる存在になり続けた。


こうしてみるとこの試合で平均点以下のプレーヤーが一人としていない。皆が出来ることを出来る限り続ける。辛い時間帯はしっかりと耐えて、好機を待つ。誰かの足りない部分は皆で補う。目新しい戦術ではない、むしろ古典的だし、今は流行らない精神論も織り込まれている。
それでもそれを皆が信じ、90分間貫徹すれば、結果はついてくるのだ。小林監督の信念が、セレッソの歴史に新しい何かを刻もうとしている。障害はあと一つだけ、勝ち点差は、僅か、1。

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