3ゴール3アシストという結果だけを見れば物足りないかも知れないけれど、1つ1つのゴール、アシストが実に良い所で決まったから、内容はかなり濃いものだったと思う。
印象的なのは1ゴール目と3ゴール目のシチュエーションの違い。
初登場、初先発のホームデポルティボ・ラ・コルーニャ戦。開始早々相手のスパイクを膝に受けた嘉人は傷口を見てプレーは無理だと思った。けれどそれを伝えられなかった。傷口を医療用のホチキスで止めた後は、痛みをアドレナリンでかき消してプレーした。そしてアシストとゴールが生まれた。
残留のかかったアウェーの、同じくデポル戦。味方のパスに反応し、左サイドを絶妙なタイミングで突破した嘉人の前にはオフサイドポジションにいた味方選手がいた。
「止まれ!」
咄嗟にスペイン語が出た。味方は背後にいた嘉人に気付き、プレーを辞めた。そうしてあの「また抜き」ゴールが生まれた。
1点目はコミュニケーションがとれなかったから生まれたゴールで、3ゴール目はコミュニケーションがとれたからこそ生まれたゴールというわけ、もちろん、後者の方がずっといい。
ふと気がついたのだけれど、このまま行けば嘉人は日本人で初めてリーガ二年目を過ごす事になりそう。来期はもっとチームに溶け込んで、実力を見せ付けてほしい。そうすれば、ドイツのピッチに立つことも、「夢」と言うほど非現実的ではないはずだから。