そのハードディスク、今年の頭くらいまで、主の手荒いシゴキに耐えながら、健気にファイルを保存してくれていたんですが、最近になって「ボケ」が始まってしまいました。
最初は「フィーン、カコン、フィーン、カコン」と咳き込む程度だったのですが、そのうち「このファイル再生して」って言っても「はて、そんなファイルあったかのう」という反応をするようになりました。そうなってくるともうすごい勢いで劣化してしまって、「カッコン、カッコン、カッコンコン」と、どこぞの民族楽器のような駆動音に。PCの立ち上がりも遅くなってきました。
慌ててバックアップ用のハードディスクを買ったんですが、安くなりましたね、ハードディスク。250Gで1万円でした。こういうの価格破壊って言うんですかね、容量あたりの単価が半値以下ですもんね。こんなに値下がりしているものも他に無いでしょう。まあともかくその筋骨隆々な250G君に、おじいさんが覚えている事を引き継いでもらうことになりました。もう元気が無くなったお師匠さんのところに若い咄家が行って、ネタを教えてもらうっていう、ああいうイメージですか。
おじいさんもう「ガコガコガコガコ」とか「ピーガガガ」とか、得体の知れない呼吸しかしていないんですが、それでも何とか汲み取れるように話をしてくれて、若手に自分が覚えている事を、一つ一つ教えてくれました。全部は無理でしたけれど、とりあえず必要な部分は何とか引き継いでくれました。
あれだけ調子が悪かったのに、おじいさんよく頑張りましたよ。多分人間に例えたら「ご家族を呼んできてください」って言われるくらいの調子だったと思うんですが、本当に懸命に、最後の最後まで仕事をしてくれました。
ものの本ではハードディスクの寿命って5年弱くらいだそうで、おじいさんよりずっと後に買ったハードディスクなんか2年半くらいでポックリ逝っちゃったんですが、おじいさんは長生きしてくれました。6年間って言うと、人間で言うと90くらいになるのかなぁ。粉骨砕身、PC初心者の私の乱雑な扱いにもめげずに尽くしてくれましたよ。もうPCに接続しても認識してくれなかったり、0バイトとしか出てこなかったりで、魂が抜けてしまった亡骸を観るようで、なんとも寂しいのですが、筐体は廃棄とかせずに、もう少しだけ置いておこうと思っています。おじいさんご苦労様でしたって、まだ言ってないですしね。