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Sun 16 May 2010

J1 第12節 C大阪2VS1神戸 今はまだ夢の続き。

前半14分 ボッティ(神戸)
前半45分+3 播戸 竜二(C大阪)
前半45分+6 香川 真司(C大阪)




原始のサッカーは祭事の一種だったと聞いている。その意味では昨日の試合は実に原始的だった。セレッソのプレースタイルもおよそモダンなものではなくて、近代的な神戸のスタイルに随分と苦しめられた。しかしそんなシチュエーションでさえシンジを送り出すための祝祭の一部だった。


香川ラストマッチの布陣は苦しいものになった。マルチネスに加えてアドリアーノもリタイア、1トップには播戸が入る。神戸にとっては因縁のあるプレーヤー。控えには前節に続いて清武が入り、黒木も戦列に加わっている。

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最後の記念撮影


前半は神戸の組織的な守備によく苦しめられた。序盤に一度、家長を中心としたカウンターが出来たが、これをモノにできないと、後は神戸の4-4-2、2ラインのディフェンスに四苦八苦という印象。

神戸は三浦監督の個性が強く出たチームだった。大久保がFW、ボッティがMF登録だったが、実際は大久保が左サイドのMF、ボッティがトップの位置にいた。素人目にも約束事がしっかりと決まっているのがよくわかる守備で、茂庭、上本の位置では楽にボールを保持できるが、羽田、アマラウに入った時からチェイスが始まり、途端にいい体勢でボールが受けられなくなる。セレッソはやむなく3シャドーが下がってボールをもらいに来るのだが、そうすると4-4のラインがキッチリと出来上がっているのでプレーが限定され、容易くボールを失ってしまう。

攻撃に関しては都倉の高さ、強さとボッティの上手さに頼りがちなので、そこさえ封じられれば何とかなると思っていたのだが、それでも自分のプレーを実行できるからこその都倉であり、ボッティなのだろう。

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都倉と上本のマッチアップは迫力


失点に関してもボッティの上手さが際立つ。なんでもない縦パス一本なのだけれど、トラップからヘデイングまで完璧な流れだった。

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堅い守備の相手に先制点を許すと苦しい。相手は約束事を守り、守備に専心していれば相手が勝手にかかってくれるのだからさぞ楽だったろう。奪えば、とりあえず都倉に当ててそこから攻撃を展開すればいい。攻撃の際もリスクを考えてプレーしているのか、それともセレッソの守備を省みない総攻撃を見慣れているせいなのか、神戸の攻めに迫力は感じなかったが、こと守備に関しては苦しい様子だった。いつものような爽快感溢れる破天荒な攻撃が完全に封じられていた。息苦しいサッカーが延々と続いていた。前半45分までは。

この試合をつまらない理詰めのゲームから祭りへと昇華させたのは、熱いベテランの意地と、神童の強い精神力。強い個の力が神戸の組織を打ち破った。

まずは播戸。前半45分まで殆ど持ち味を活かしきれないでいた。好機を2度、フイにもしていた。そのもどかしさはあったはずだが、それをグッとこらえて、得点機を待っていた。前半ロスタイム。窒息しそうな左サイドから右サイドにボールが流れ、高橋が突破に成功。一部でも破綻すれば、途端に崩壊が始まるのが組織というもの。CBが播戸のマークを一瞬外してしまう。クロスは相手CBとGKの間、グラウンダーで、強く速く。これを播戸が気合で押し込む。まず同点!

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閉塞感から開放され、セレッソの攻撃が一気に息を吹き返す。アマラウの突進がファウルを誘い、ゴール前絶好の位置でフリーキック。位置的には左足のキッカー(家長)が蹴った方が有利だったが、意表を突いて香川が右足を振りぬく。相手GK紀氏も左足と踏んでいたか体重移動が逆になり、防ぎきれなかった。前半ロスタイム、僅か6分間の逆転劇だった。長居はチェスボードから祝祭の空間へとその姿を変える。

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後半は得点こそ生まれなかったが、実にセレッソらしい45分間だった。ノーガードの殴り合いこそ身上とばかり攻め立てる。セレッソが逆転したことで心理的に上位に立ったこと、これが一番大きいが、傍目から見て神戸側にも二つミスがあった。

一つは都倉を早々に下げてしまったこと。ポストプレーの質が悪かったという見方もあるが、上本や茂庭を持ってしても苦しんでいた都倉の高さが消えたのは、セレッソとすれば単純にありがたかった。いま一つはボッティを一列下げ、代わって大久保をトップに入れたこと。この二つの変更で、神戸は前線でタメを作れる選手がいなくなってしまった。

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セレッソ時代の荒々しさが消えてしまった大久保



これで流れは完全にセレッソに移った。家長のタクトで前線が踊り、シュートの雨が降ってくる。香川が、乾が、ミドル、ループ。撃って撃って撃ち続ける。クロスもたらふく放り込む。

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決めきれないのは大問題だが、昨日の試合に関してはなぜか許してしまえる自分がいた。セレッソらしい試合をして香川を送り出せる喜びが、シュートを決めきれない苛立ちを上回っていたから。もっとシュートを、もっと攻撃を、華々しく咲き誇れ。セレッソ大阪!

しかし夢の時間もやがて終わりの時を迎える。後半43分清武投入、下がるのは香川。せめて最後の奉公と、ピッチに倒れて時間稼ぎ。

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CBコンビが手厚い介抱


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後半43分


時間稼ぎは鹿島戦で経験済み、もう慣れたもの。相手コーナーでひたすら粘る。ベンチもカードは一枚ずつ切って、時間を使う。尾亦から石神、羽田から藤本。

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後半44分


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後半45分+2


勝っていてロスタイム、普段なら早くタイムアップの笛が聞きたいところだが、この試合だけは、その笛を吹かないでほしかった。ずっと香川といるこの時間を味わっていたかった。こんな気分は森島のラストマッチ、2008年の愛媛戦以来だ。背番号8との別れはいつも悲しい。


香川の置き土産によってW杯前を勝ち越して終えたセレッソ。次の課題はこの大きな穴をいかに埋めるか。清武がフィットするのか、違うシステムを試すのか。ナビスコ杯を無駄にしてはいけない。
posted by 西中島南方 at 13:39 | Comment(4) | TrackBack(0) | 観戦記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも通りの「明快なレポート」、そして今回は【特別な日での】感傷が感じられGJでした!

私的には、セレッソとシンジのあしたをシンジています。
●シンジはやっぱり持っている。…得点力だけでなく:結果を出す力:責任力、それを発揮するための(考え方、努力する力を含めた)才能を。
●その力がW杯後の再開から無くなることはもちろん非常に痛いのですが、今のセレッソには過去には持ち得なかった【GK+強力DF陣による堅守】+【家長・乾・清武等による多彩な攻撃】があるので、減少する得点力を補う方法を今後の中断時にチーム全体で見つけてくれるものとシンジます。

●香川自身も、フィジカル的にはなかなか難しいかもしれませんが、求められている役割はムキムキ筋肉マンではなく:リトバルスキーや(2002年W杯時トルコチームの)ニセモリシ選手的な役割だろうから、それに向かって努力すれば、かならず結果を出す力を持っているものとシンジます。


Posted by バロワン at 2010年05月16日 19:27
シンジならやってくれるだろうと思います。でも、だから寂しいです。

だってすぐに帰ってくるさって思えないですもんね。シンジならずっと長く海外にいそうで…。
いつかモリシが監督になったら、また桜色のユニフォームに袖を通してほしいです。

そして代表ではジンヒョンとの日韓対決を期待しています。
Posted by 西中島 at 2010年05月16日 21:31
いつも楽しく拝見しています。
ゲーム前から何か「香川のための試合」になる予感がありましたが、ここまでその通りになるとは。
シンジが「何かを持っている選手」であることが改めて証明された気がします。
ゲームの評価の上では、貴兄が指摘された通り、都倉の早い交代は実に助かったなと思います。
実際、彼にボールが入る形で相当に手を焼いていたはずで、彼がピッチを去ってからは殆ど神戸はノーチャンスだったように見えました。
シンジを送り出すための祭りは華やかに終えることができましたが、課題も見えていますね。
前半の2枚のCBへのイエローは通常なら相当な不利な材料だっただろうし、当日の岡田主審の基準を見れば、
もう少しカードが出ていても可笑しくない不用意なプレーがあったように思います。
確かに、あの2枚立て続けの前の場面のシンジに対するプレーは「どファウル」に違いないと確信はありますが、
典型的な「泣きっ面に・・・」にのパターンだっただけに折角機能している4バックの中心2枚に累積が増えたのはいただけません。
あとはやはり乾でしょうか。後半ロスタイム突入前の決定機は、まだ今シーズンでノーゴールの選手だからという気がしました。
惜別弾で3−1で終わる予感だったのですが。
これまた貴兄のご指摘通り、ナビスコ杯は重要な試金石となりそうです。テレビ中継がないのが何とも残念ですが。
Posted by 桜玉三郎 at 2010年05月17日 00:39
心配事はやはり家長、乾が未だ無得点ってところですかね。
もし彼らが1点でもとっていたらシンジを送り出すセレサポとしてももう少し安心できたのですが…。

清武に関しては本当に期待しています。素晴らしいプレーヤーですから。
アドのようにフィットしてくればまたガンガン攻め込めるチームになるはずです。
Posted by 西中島 at 2010年05月17日 13:47
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