何を言うかと思われるかも知れない。アマチュアがすごい作品など作れないだろうと。
実はそんなことはない。アマチュアだから下手(プロだから上手い)ということを言う人は、多分プロとアマチュアの定義を間違えているのだろう。
喩え話をしよう。プロのパティシィエとお菓子づくりが好きなアマチュアが、ティラミスを作りたいと考えた。
プロは、それで儲けを出さないといけない、生活しないといけない。なので適正な価格にまとめるために素材選びが限定されるし、かける手間暇も変わってくる。その中でいかにおいしいティラミスが作れるか試行錯誤をして、万人に喜ばれるものをと考える。プロである以上責任があるので、そう冒険はできないが、そこはプロの技と経験でカバーするのだ。
アマチュアは、まずそれを売って生活しようとは考えない。大抵は趣味の範疇なので、責任も重圧もない。なのでその時点で気持ちがプロに負けていて、おいしいティラミスは作れない。多くの人が考えるアマチュアというのは、そういう人達の事だろう。
しかし中には程度を知らないアマチュアもいる。採算度外視でとんでもない手間をかけ、割りに合わない食材を使って、プロ顔負けのテクニックを使ったティラミスを作る輩がいるのだ。彼らは多くのアマチュアが考えている「ティラミスを売って生活をするわけではない」という定義を真逆に考える。そうしてプロよりもおいしいティラミスを作ってしまうのだ。
こうしたちょっとおかしなアマチュアが、時々世の中を変えたりする。前述したガイナックスにしたって、割りに合わない仕事をひたすら行ったことで、ナディアやエヴァのようなとんでもない作品を作ってきた。エヴァの最終話なんて、普通の会社なら通らない話だろう。
日本サッカーの世界でも、いい意味でバカなアマチュアが、いろんなところでいろんな人たちを支えている。そうした人たちはただサッカーが好きで、サッカーが好きな人が好きで、それで割りに合わない仕事を、笑いながら、泣きながら続けている。彼らに日が当たるようにと思っているけれど、日本人はそんな人達の思いやりを、時々当たり前のことと誤解したりするから、それが悔しくもある。もう少し報われる世の中であればいいのだけれど。