サッカー系のブログとしてここをご覧いただいている方にはなじみの薄い名前かと思うが、過大評価ではなく、今の日本のアニメ界を引っ張っていた素晴らしい映画監督だった。宮崎駿や細田守という名前がメジャーになっているが、そのとっつきの悪さ(独特のクセのようなもの、庵野さんともまた少し違う感じ)を乗り越えられれば、あれほど素晴らしい世界を作り、話を紡ぐ人もいない。
狂気と幻覚の狭間に心揺れる「パーフェクトブルー」虚構と現実、現代と過去と未来をさまよう「千年女優」一見バラバラにはられた伏線が一本の流れとなって結末に向かう「東京ゴッドファーザーズ」筒井康隆の脳内から夢幻の世界を引きずり出した「パプリカ」監督された長編映画は全て見ている。「妄想代理人」も全話見た。大好きな人だっただけに、ショックだ。
他人からすればたった4作かもしれないが、そのどれもがいい。説教じみてもいないし、感動を押しつけるわけでもない、ただただ人の生きることの美しさを、写実的に映していく。
「ほら!美しいでしょう!」
なんて、口が裂けても言わない。ドロドロとした暗い部分ばかり描くこともある。それでもなお、人として生きることが素晴らしく、美しいことを、ほんの少しスパイスを効かせて伝えられる、それが今敏の才能。今までいなかったし、多分、これからも現れることは無いだろう。
もしパプリカがいたら、これは夢だと教えてほしい。黄金バットがいるなら、このふざけたストーリーを終らせるためにオレの頭をぶん殴ってほしい。ガツンと頼む。