セレッソの新しい歴史が始まった。こんなに近くに選手を感じられるスタジアムで試合が観られることを幸せに思う。ただし「こけら落とし」の演目にしては、この試合はいささか力不足だった。負けなかったこと、失点をしなかったことが救い。
スターティングメンバーにもベンチメンバーにもアドリアーノの姿がない。練習中のケガが響いたか。負傷離脱のキム・ジンヒョンに代わってゴールを守るのは松井。
試合の立ち上がり、15分くらいはセレッソが攻めていたと思う。前4枚にボランチ、丸橋からいいボールがわたれば一気に仕掛ける。
ただ川崎は冷静だった。中村憲、稲本を中心に小さくブロックを作ってスペースを消し、ミスがあればボールを奪い、前のジュニーニョ、黒津に。タスクがシンプルな分、流れがスムーズ。セレッソはどうしてもゴール前での即興が必要な分、そこで攻撃のベクトルが鈍化してしまう。そこを突き抜けるアドリブができた時は一気に流れが引き寄せられるのだが、夏の盛りの、座っているだけで湯気が出そうなコンディションで、冷静にプレーできた選手が何人いただろう。手詰まりになって確率の低いミドルというパターンが散見された。播戸もよく頑張っているのだが、アドリアーノのような一人で突破する力がない。やはり播戸は2トップで生きる選手。
守備に関しては、川崎のカウンターが素晴らしかったのか、セレッソのバランスが悪かったのか、サイドのスペースをよく使われていた。特に前半20分を過ぎだした頃からはよく右サイドの裏を突かれた。30分頃にはジュニーニョをケアしていた茂庭が芝に足を取られて完全に守備組織が崩された。これはフィニッシャーの黒津が完全にミートできず、丸橋が渾身のカバーリングで難を逃れる。
丸橋はこの試合のMOMと言ってもいい。2度の危機を2度とも救い、攻撃のアクセントとしてなんども上下動を繰り返した。慣れないはずの左サイドバックの役割を十分に果たした。
前半は川崎の決定機一つがあっただけで、肌につく汗のように不快な、どんよりとした流れだった。
後半は、前半に飛ばしていたセレッソと、静かに時を待っていた川崎の間で主導権が移動してしまった。開始早々の川崎のカウンター(ヴィトール ジュニオール?)に松井が飛び出しミスであわや失点というところから雰囲気が怪しくなる。攻めに焦るセレッソと、逆手に取る川崎。もし川崎に強烈なフィニッシャーがいたらと思うとゾッとする。
川崎のコーナーキックからはまたしてもピンチ、今度もゴールの中に陣を敷いていた丸橋がヘディングで弾きだす。
業を煮やしたレヴィーは2枚同時投入で局面の打開を図る。播戸を下げて小松、清武を下げて石神。石神は左サイドバックに回り、丸橋が一列上がった。
後半23分
しかしこの大胆な采配もあまり効果がない。小松が強引な突破からキーパーと1対1になったところをミスしてしまうと、いよいよ打つ手がなくなっていく。後半30分過ぎからは、正直書くことが少ない。家長を下げて黒木を入れ、中盤に運動量を回復させようとしていたが、効果が薄い。
後半34分
夏場の戦いが続き、疲れが出ているのがよくわかった。新しいスタジアムの芝に慣れないのも、けが人が出てベストメンバーが組めないことも辛い。それでも試合が続く以上、常にその時のベストを見せてほしい。それがサポーターとしての願い。