私は作業をしながら佐々木さんに他所の会社の話を聞いたりする。最近忙しいですね。とか、この作業他の会社ではどうやってるんですか?とか。
「どこも大変ですよ。皆さん苦労されています」
佐々木さんはしみじみと言う。
「でも中には楽をされている会社があったりして」
「いやいや、皆さん必死で頑張られています」
「でも頑張っても報われない時もありますよ」
「いやいや、それは違うんです。確かに頑張っても報われない時はあります。でも頑張らないと絶対報われないんですよ」
短い会話だったけれど、よく覚えている。そしてこの話を思い出す度、モリシの顔が浮かんでくる。
誰が見たって努力しているのは判っている。それなのにタイトルが遠い、記録が遠い。もしもモリシがもっと恵まれた環境にいたなら、もっと評価され、報われた選手生活が出来ていたかも知れない。ひょっとしたらモリシはこうして不幸続きの人生なんだろうかと、いらぬ心配さえした。
その森島家に、ようやっと女の子が生まれたらしい。どうやら元気なようだ。さぞモリシも喜んでいるだろうと思う。この子が森島家に幸せを運んでくれるよう、願って止まない。おめでとうモリシ。最初は夜泣きとかいろいろ大変だけれど、女の子って可愛いものだよ。娘がいる人間が言うんだもの、間違いないよ。判らないことがあったらメール下さい。それではそれでは…。