この12試合、セレッソは4つのパターンを試している。まず開幕時のメンバー。
今見ても、ちっとも得点の匂いがしない並び。第一節、第二節はこのメンバーで臨み、二連敗。得点がセットプレーの1点だけで、失点4。流れからはチャンスの数さえ希少だった。縦ポンと言われる長いパス一辺倒ではそれもやむなしか。
そこで守備から入る都並監督は、ボランチを一枚増やして守りを固め、トップに縦パスをキープ出来る森島康を置くシステムを導入する。いわゆる「クリスマスツリー」
中盤が厚くなったこと、前線に高さという要素が出来たことで、それまでより多少サッカーらしい試合が出来るようになり、京都戦ではようやく初勝利にありついている。
ただこの布陣では、ロングパスのターゲットである森島康が、必ず相手に競り勝たなければ攻撃の形が作れず、守備陣がズルズルと引きこもってしまうという難点があった。このシステムで臨んだ第三節から第五節までの得点は3、ただし2得点はコーナーとゼ・カルロスのフリーキックで、流れからの1得点もこのシステムを崩してから生まれている(いずれも京都戦)また守備も安定せず、失点のペースも変わらなかった。
結局クリスマスツリーも1勝2敗、得点3失点5と劇的な効果は無し、新たな形を模索することになる。
転機になったのは第六節の鳥栖戦。酒本が右サイドに入ってから。
左にゼ・カルロス、右に酒本と、縦への突破が出来るタレントが入り、中央の森島康へのプレッシャーが軽減された。またボランチに濱田が入った事で、底からゲームを組み立てられるようになった。
このメンバーが中心になった第六節から第九節までは、2勝1敗1分であるものの、得点6失点2と、今期初めて、得失点がプラスに転じている。完封試合も3試合あり、守備も安定し始めた。唯一の黒星となった山形戦では森島康がコンディションを崩し、スタメンを外れている。これを考えれば、この布陣が今のところセレッソのベストなのではないだろうか。
ところが好事魔多し、水戸戦後に森島康が抜け、福岡戦中にゼ・カルロスが負傷するというアクシデントが発生、チームは編成を根底から作り直す必要に迫られる。
ここでセレッソを崩壊の危機から救ったのは、十代の選手達、柿谷、中山、香川だった。
福岡戦ではゼ・カルロスが負傷後、中山が左サイドに入り、柿谷、中山のホットラインが生まれる。この二人の流れから、中山が一時は勝ち越し点となるプロ初ゴールを上げた。
続く第十一節草津戦では、柿谷がJ2最年少記録となるプロ初ゴールで、チームを勝利に導く活躍を見せ、香川は途中出場ながら、守備、攻撃両面でアクセントとなる働きをしている。
但しこのメンバーでは前線に高さが無いため、ロングボール、ハイボールに苦戦する場面が目立つ。第九節までで7点あったセットプレーからの得点が、第十節以降はたった1点しか上げられていないのもこの影響か。ゼ・カルロスという絶対的なキッカーがいない点を加味しても、少し気になる数字だ。攻撃が四苦八苦すると守備にも悪影響を及ぼすのか、3試合で4得点3失点と低調になっている。また若い選手はまだ連戦に慣れておらず、悪い意味での若さが出たり、ペース配分が出来なかったり、改善点は多い。
こうして見ると、当座はゼ・カルロス、森島康、そして精神的支柱である森島寛の復帰までに、どれだけ我慢が出来るのかが課題といっていいかもしれない。
そこまで頑張れれば、まだチャンスはあるが、このままズルズルと下がっていくようでは、シーズン途中で早々にギブアップということになるだろう。若手の経験値を上げる為に一年を犠牲にしてもいいと腹をくくれればいいが、昨季あれだけ選手が放出され、今年も興行的に苦しいことが傍目でもはっきりと判る現状では、迂闊なことは言えない。
最後に、少し意地悪な数字を。この12試合を見ていて、キーになっているプレイヤーが二人いる事に気がついた。苔口と酒本だ。
まず苔口。先発した試合は6試合(仙台、湘南、東京V、京都、札幌、山形)あるが、この6試合は1勝5敗、得点5失点11と惨憺たる数字になっている。逆に先発していない6試合では3勝3分と負けなしで、得点9、失点3と安定している。
そして酒本。先発起用は7試合(鳥栖、愛媛、山形、水戸、福岡、草津、徳島)3勝1敗3分、得点10失点5。先発を外れた5試合では1勝4敗、得点4、失点8。
勿論これだけの材料で、苔口が劣っているとか、酒本が優れているとか断言するつもりはない。苔口が出場していたシーズン序盤は、チームが体を成していなかったという側面もある。ただ少なくとも、苔口がチームで生き残り、活躍する為には、相当な頑張りが必要だろう。
これ以外にも様々なデータが、都並監督の下に届いていると思う。これを整理し、第二クールを乗り越え、反撃の転機としてほしい。次節鳥栖戦はもう明後日に迫っている。