水戸戦の引き分けは、価値のあまり無いものだと思うけれど、今日の引き分けには価値がある、多分。
第一に、よく走った。とにかく走れた。前から前から、点を取られても、追いつかれても、挫ける事無く足を止めなかった。
第二に、久しぶりに流れから点が取れた。こぼれ球を詰めた、決して華々しいゴールではないけれど、最初のシュートを放った柿谷と、詰めた中山の
コメントを見る限り、決して偶然の産物ではないようだし(むしろ様々なシチュエーションを想定できる、意思の通い合った二人の得点と言えなくもない)新しいホットラインの誕生を嬉しく思う。この二点だけでも立派な成長。
先発は前節出場停止処分を受けたアレーに代わって、濱田がボランチに入った。右サイドの攻撃的位置に中山が入る。ゼ・カルロスが復帰し左サイドに。
セレッソの出足は好調だった。相手のDFラインが不安定なところもあったが、相手陣内深くまでボールをチェイスし、少しのほころびも見逃さずにパスカットするなど、今までで一番の出来だった。
しかしそこで点を取れないのが、今のセレッソの弱さなのだろう。明らかに飛ばしていた時間帯で押し込めきれないで、逆襲に出た福岡に、ワンチャンスをモノにされてしまう。精神的にキツイ展開。
その後も田中にバー直撃のシュートを放たれるなど、大苦戦するのだが、今度は福岡が押し切れず、セレッソは徳俵ギリギリで崩壊の危機を脱する。
ここで連続失点をしなかったのは大きかった。1点差ならば、まだモチベーションを保てるし、相手としても意識が守備的になる事も有ったし。
痛かったのは、江添が軽率なプレーでイエローを貰ってしまい。次節出場停止になった事。特に厳しくいく必要は無かったシーンだったのだけれど…。
泣きっ面に蜂が飛ぶ。今度は前半途中でゼ・カルロスが痛み、交代。攻撃の流れを作る選手がいなくなってしまった。今の時点で正式な診断結果は出ていないけれど、何とか軽症であってほしい。
前半32分、ゼ・カルロスに代わって酒本が入り、右サイドに。中山が右サイドから左サイドにポジションを移す。
この変更により、中山と柿谷が同じサイドでプレーをし始め、結果パスに多少の連続性が出始めた。代わって入った酒本も平均以上の出来で、この3人が終始相手の中盤を苦しめた。
これを「怪我の功名」というのは不謹慎ではあるけれど、とにかく、意思疎通が出来る選手が近い距離にいるというのはいいものだ。久しくなかったタテへのスピードも出てきた。
後半早々の同点弾に関しては、正直喜んでいいのやら…。前田がそこにいて、何が何でもボールに触れ、ゴールへ押し込もうと強い意識を持ったプレーをしてくれたところ、それは有り難いのだけれど、どうにも意図したものではないようだし。
まあ、とにかく同点は同点だし、不振が続く前田にとってのカンフル剤になればと、その時は考えてた。試合後には、あんまり効果が無かったよなと後悔したけれど。
同点になってからも一進一退。セレッソは柿谷の調子がいま一つで、流れがキッチリとしていないし。福岡もリンコンとアレックスががんじがらめになると攻撃に迫力が無い。
そんなコンディションでもゴールに絡み、大きな仕事が出来る柿谷というのは、やはり役者が違うのか。不振なら不振なりに、相手にとって嫌な位置にいて嫌なプレーをしてくれる。運動量に関しては中山、古橋、酒本には適わないかもしれないけれど、要所要所、いてほしい場所にいてくれるというのは有り難い。特にスローインの時とかね。
そして中山のJ初ゴール。前述の通り、見た目泥臭く、実は中身の濃い得点。これは手放しで喜べた。運動量があって、質も高くて、しかも両サイドが出来て、おまけにいい相棒がいる。恵まれている上に、努力も惜しまない、いい選手だ。
これで終われば、それこそ大団円。満点の試合運びなのだけれど、林のゴールは余計だった。以前は「安易にロングボールは止めよう」という感じだったけれど、今度は「相手のいないところにクリアすれば、まあいい」程度まで努力目標を下げなくてはいけないのか。あれだけ人がいながら、守りきれずに失点とは…。次節はディフェンスリーダーの江添がいない。不安材料ばかりが目に付く。
同点に追いつかれてからの交代、最初の中山と香川の交代に関してはアリ。ロスタイムの古橋と苔口のそれはナシ。
中山がいかに若い選手だといっても、あれだけ動いていたらバテるはずだし、攻守のバランスを考えても、前の運動量を考えても、香川を出す意義は多分にある。見せ場こそ無かったけれど、タイトなシチュエーションの中でプレーした経験は、後々生きてくるだろう。
ただ苔口に関しては、いろんな意味で判らない。
入った時はもうロスタイムに入っていたから、勝つ気があるなら、少しでもプレーの時間を削りたくない筈だし、最近の苔口のコンディションを考えれば、あのままでもよかった。たらればになるし、邪推ではあるけれど、最後の最後、ゴール前までカウンターで切り込んだ濱田の横で追走していたのが、苔口ではなく古橋だったら、濱田はあれほどパスをためらっただろうか。
それはそれとして、過ぎてしまった事に後悔をするより、前向きに明日を考えよう。良かったところは伸ばし、反省すべきところは修正して、次こそ勝てるようにする。そんなポジティブな思考が、久しぶりに出来るような試合だった。勝ち点や順位は相変わらずで、鬱陶しいところをさ迷ってはいるけれど、とりあえずサッカーの試合になったんだから、今日は良し。